■新型コロナウイルス感染症 基本に立ち戻りましょう
5月25日に緊急事態宣言が解除されたばかりだというのに、最近都内では週に1000人を超える感染者が再び発生してしまっております。そもそも緊急事態宣言の意義というものは、外出自粛や休業要請を行うことによって人と人との接触を防ぐことにより、ウイルスそのものの移動を抑止し感染拡大を防止するということに尽きますので、当然このようなことを行えば感染者は減少していきます。しかし、これをやめてしまえば途端にまた感染者は増えてきてしまうのです。
では、現在(令和2年7月15日)この状況下で経済を成り立たせながら、感染者を減らすためにはいったいどうすれば良いのでしょうか? 政府は7月22日からGo toキャンペーンと呼ばれる事業を1兆7千億円という補正予算を組んで行おうとしておりますが、これは新型コロナウイルス感染症によって観光需要の低迷や外出自粛や営業自粛が行われた影響により、地域の多様な産業に対し甚大な被害を与えてしまうことになってしまったため、地域を再活性化するために需要喚起策として実施するというものであります。確かにいままでの自粛により地域によって差はあるとしましても、特に観光業界にとりましては死活問題となっていると言っても過言ではないと思います。
しかし、この状況で感染者が日本中に拡散すれば、おそらく日本の感染者はさらに増加するであろうことは皆さん容易に想像ができるのではないでしょうか。
もしそのようになってしまえば、経済により人命が危機にさらされるのか、新型コロナウイルス感染症によって人命が危機にさらされるのかという違いこそありますが、本末転倒になってしまうように思えてなりません。
これは、あくまでも私の個人的な見解ではありますが、もし、そうであるとするならば、キャンペーンにかかる1兆7千億円という予算を地域の活性化や観光業界に補助金という形で支給した方がよほど安全に目的を達成させることができると思いますし、どうしてもこのやり方で行くということであるならば、もう少し新型コロナウイルス感染症が落ち着きを見せてから行っても良いのではないでしょうか。世の中には様々な職業がございますし、地域によってもかなりの差異がありますでしょうから、ご異議もあるかとは思いますが、このような状況下で行うことは時期尚早と私は考えます。
単純に経済を優先させるのではなく、新型コロナウイルスの感染状況を様々な角度から正確に把握、分析した上で何らかの対策を打ちながらこのようなキャンペーンを行うということができれば国民も安心してこのキャンペーンに参加することができるのではないかとも思うのですがいかがでしょうか。
これを医療に例えますと、何らかの病気の治療や手術を行う場合には、事前に必ず検査を行いますが、もしそれがなければ病気の治療も手術も行えません。必ず現状をきっちりと把握し、原因を分析して初めて治療方針が立てられ治療が行えるものだと思います。
新型コロナ感染症に関しても病気ですので、治療方針を決定するためには、現状をしっかりと把握し、原因を分析することが必須だと思われますが、現在の日本においてはPCR検査数が他国と比較しましても極めて少ないというのが現状ですので、現状をしっかりつかむことができていないのです。
山中伸弥教授の新型コロナウイルス情報発信によれば、「PCR検査の陽性率は東京で約40%、大阪で約20%と高い数値となっております。これは危険領域です。非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定されます。アメリカは日本よりはるかに多くの検査を行っていますが陽性率は20%程度で、専門家は、まだまだ陽性率が高すぎるので検査数を3倍は増やす必要があると訴えています。それが社会活動再開の最低条件だと主張しています。十分に検査をしているドイツは陽性率7%、韓国は3%です。感染者数のみで一喜一憂するのではなく、真の姿をとらえる必要があります。」と記載しております。
さて、前置きはここまでとして、検査数を増やすか増やさないかなどに関しましては私たち個人が決められる問題ではございませんので、私たちにできる両立の方法として「各個人が基本に立ち戻りましょう」ということを申し上げたいと思いますが、検査数が少なく新型コロナウイルス感染症の実態がつかめない以上、各個人一人一人が以下に記載する3つの事項を実践していただくこと以外に方法がありません。そうすれば感染拡大は確実に減少していきますので、以下に掲げる3つの感染防止策を再度お願いさせていただきたいのです。
1、 三密を絶対に避ける
2、 外出時は必ずマスクをする
3、 消毒用エタノールの使い方を学ぶ
1の「三密を絶対に避ける」ということですがここで三密という言葉を再度復習してみたいと思います。その理由は、多くの方が三密の意味を正しく理解していただけていないからなのです。患者さんに三密はだめですよと言いますと、多くの患者さんはそうですねと同意をしていただけるのですが、三つの密をすべて言えますかと質問させていただくと、ほとんどの方が言えないという状況になってしまうのです。
また、三密とは「密集」、「密接」、「密閉」のことを言いますとお伝えしましても、一つ一つの意味を正確に理解されていない方も多いようですので、知っているよと思われていらっしゃる方ももう一度復習してみていただければ幸いです。
先程も記載させていただきましたが、三密とは「密集」、「密接」、「密閉」の3つのことを言います。
最初の「密集」とは簡単に言いますと人が集まってしまうことを言います。ただ、誤解していただきたくないのは、2人ならいいとか30人だからだめだとかといった単純な人数の問題ではないということなのです。たとえ友達同士2人で食事に出かけられたとしましても、その二人は同一の場所に集まった結果、マスクもせず数時間にわたって食事や会話をしてしまうわけです。仮に自分が非感染者だとしましても、友人が一週間以内に夜の街にある接待を伴うお店やライブハウス、映画館、劇場、コンサート会場、パチンコ店などのいわゆる三密といわれる施設に行った、もしくは行った方との濃厚接触があった場合には、結果として自分が感染してしまう可能性が起きてしまいます。したがいまして、家族のように寝起きを共にしている人以外の人の場合には、仮に2人だとしても普段の私生活がまったく見えませんので密集という解釈になるわけです。
もちろん、この時期に数十人、数百人、数千人、数万人という規模で集まる可能性のある、劇場、コンサート会場、演芸場、映画館などはクラスターを簡単に発生させてしまいますので、絶対に避けなければなりません。また、企業や組織で起こりやすい例としましては、経費を浮かすために20人限定の宴会場であるにもかかわらず、立食にして50人を詰め込んでしまえというような状況も密集になってしまいます。また、住環境が劣悪な会社などでは外国人の日雇い労働者や非正規労働者などを、6畳一間に3段ベッドを2つ3つと並べて、6人、9人といった人数で生活をさせているような状況もあるそうですが、これも密集にあたります。
また、ライブハウスなどでも収容人数の規定を超えて立ち見のお客さんを入れてしまうような事例もあるそうですが、どの例もマスクを使用するような環境にない状況で集まってしまっておりますので、感染のリスクはかなり高いと言わざるを得ません。
次に「密接」ですが、密接とは簡単に言いますと、他人と他人が容易に接してしまうような距離感に存在する状況を言います。
カウンター席のみのラーメン店などでは隣の人と触れ合うくらい椅子が近接して並べてあることがありますが、このような状態では食べているときに隣の人と簡単に接触してしまいますし、物を食べているということはマスクをしていないという状況ですので、より感染のリスクは高い状況になっていると考えられます。この他、公園で子供を遊ばせている間、お母さま方が隣り合ってサンドイッチやハンバーガーなどの軽食を食べていたり飲み物を飲んだりしながら会話をしているという状況も密接、密集ですし、マスクも着用することもできません。
その他、俗に言う接待を伴う夜街関連の飲食店の他、劇場、コンサート会場、演芸場、映画館なども隣り合う席同士が非常に近いため密接に当たります。
またコンタクトスポーツ(ボクシング、空手、柔道など)や複数人でするスポーツ(野球、バレーボール、サッカー、バスケットボールなど)もプレー中に接触が起こりますし、ダンス教室やヨガ教室、ゴルフ教室、ジムなどもインストラクターとの接触が発生しやすい場所となります。
また、混雑した電車やバスも密集なのですが、電車やバスにおいては現在窓を開けて走行している場合が多い他、多くの方はマスクを着用しておりますし、話をすることも少ない分だけリスクは下がります。
次に「密閉」ですが、簡単に言いますと換気の悪い環境の場所のことを言います。これを簡単に判断するためのポイントは大きな音が出るような施設がそれにあたります。コンサート会場、映画館、カラオケ、クラブ、ダンスホール、ライブハウス、パチンコ店などです。
このような場所では窓を開けてしまうと近隣に迷惑がかかってしまいますので、窓を開けることができないのです。皆さんの知る限り上記にあるような場所に窓があるのを見たことがないのはそのためです。
したがって、そのような場所では換気を十分に行うことができずに感染リスクが上がってしまうのです。
最近では飛沫感染や接触感染に加えて空気感染もありうるという報告もあるようですが、これを防ぐための最大の防御策が換気なのです。冷房を付けて窓を閉めた状態で仕事をするような環境やそのような環境の飲食店などは絶対に避けなければなりません。また窓を開けるだけでは床に落ちたウイルスが舞ってしまうだけになってしまいますので、常に一方向への空気の流れを作りながら換気を行うということがとても重要になります。一番安心できる環境としては、冷房はついておりますが、窓も多方向に開けられ、一定方向に部屋の中の空気が流れていくような換気を行っているような状況の場所と言えます。
2の「外出時は必ずマスクをする」ということですが、どのような状況におきましてもマスクを着用していただきたいと思います。特に市街地ではいつ誰とすれ違うかわかりません。後や前から自転車などで近づいてこられた方がマスクをせずに咳き込みながらすれ違ってしまうというようなことに出くわすこともありますし、前を歩く方が咳き込んで歩いていた場合には当然その後ろを歩く方はウイルスを吸い込んでしまう危険性もあります。以前にもお話ししましたが通常のマスクで感染をブロックすることは不可能です。しかし、マスクをすべての人(感染者も非感染者も)が着用することで、確実に感染を減らすことができるのです。実際にケンブリッジ大学による研究では世界総人口の75%の方がマスクを着用すれば感染は縮小していくというデータを示しております。
感染者がマスクを着用すれば飛沫するウイルス量を減少させることができますし、非感染者がマスクを着用すればウイルスの侵入を少なくすることができますので、体の免疫力の方が勝ち発症しないで済む可能性もありますし、感染したとしても感染をさせない感染者になる可能性もありますので相乗効果によりリスクが下がります。
このような理由から外出時のマスクの着用は必ず行っていただくことがとても重要になりますが、マスクを着用したからといって、換気の悪い部屋において他人同士で会話をすることなどはなるべく避けられた方が良いと思われます。
3の「消毒用エタノールの使い方を学ぶ」についてですが、最近ではようやく消毒用エタノールが買えるような状況となってまいりましたので、ぜひ皆さん見つけましたら購入していただければと思います。
よくジェル状のものを使っているという方がおりますが、ジェル状のものの中にはウイルスを死滅させるのに十分な濃度のアルコールが含まれていない製品がありますので注意が必要です。最も適したアルコール濃度は70%~80%ですので、ぜひ消毒用エタノールというものをお買い求めください。
次に使い方のコツですが乗り物(タクシー、バス、電車など)や施設(買い物などで行く施設、趣味で行く施設、銀行、レストラン、病院や薬局など)から出た際に使用するということをお願いいたします。
使用法としては、まず、小さめのスプレーボトルをお買い求めいただき、その中に消毒用エタノールを入れて普段からカバンなどに入れて携帯をしていただきます。次に乗り物などから降りたらすぐに両手の手の平にたっぷりとスプレーをして揉みこんでください。もちろん、乗り物の中ではいろいろなものに触れないように意識はしていただきますが、どうしてもタクシーなどでは乗り込む際にシートや手すりなどを触ってしまいますので、その手で目をこすってしまったりしてしまうようなことは絶対に避けなければなりません。バスや電車におきましても何にも触れていないつもりでいても何らかのものに触れていることがありますので、降りられた後は同様にスプレーを十分にしていただければと思います。
次に施設ですが、こちらも同様です。施設から外へ出ましたら、必ず十分にスプレーをして揉みこんでください。食品を買うためにスーパーなどにはどうしても行かなければならないと思うのですが、このように感染症が流行している間はマイバッグやエコバッグの使用は衛生面から考えてお控えいただき、スーパーで今まで無料で配布されていた数円のビニール製の買い物袋を使用していただければと思います。
買った商品を通常通り袋に詰めたのち、そのままスーパーの外へ出ます。スーパーも施設でございますので、外へ出ましたら、まず両手に十分スプレーを行います。その後、ビニール袋の口を開いてそこに消毒用アルコールを4~5回吹きかけます。次に袋の口をつまんでガシャガシャと2.3回動かしましたらなるべくアルコールが逃げないように袋の口をギュッと閉めてそのままお家に持ち帰っていただきます。
このようにしていただくだけで、お家に着いたころには、その中に感染を起こさせるほどのウイルス量は少なくとも存在しなくなっていることは間違いありません。
ちなみに、消毒用エタノールは体に対しまして完全に無害ですので、野菜などに対しても問題なく吹きかけることができます。
消毒用アルコールが不足していた時には、どうしても次亜塩素酸ナトリウムに頼らざるを得ませんでしたが、現在は消毒用エタノールが流通してきておりますので、今まで以上に予防することが容易になってきております。
以上のように、この3つを確実に守ってもらえることができれば感染者は確実に減少してくるのですが、大切なのは国民全員で意識をするということなのです。若い人からお年寄りまで、すべての人が普段から必ずマスクの着用をしていただき、特に若い人たちによる夜の街界隈での遊行を控えていただかなくてはなりません。また、常に手指を消毒用アルコールで消毒するということもたいへん重要です。
ここに記載しました、3つの守るべきことが国民全員の習慣になっていただけることによって、一刻も早く国民が安心して生活ができるようになりますことを心より願っております。